眼鏡がない って?
木曜日。 介護施設のケアマネージャーさんから 電話がありました。
「おばあちゃんの 眼鏡がお家にありませんか? リハビリで仕事をする時に 目が悪くてよく見えないっておっしゃるんですけど。」
「入所する時に 荷物の中にいつも使っていたらしいのを 一つ入れておきましたけど。」
「眼鏡がない、眼鏡がない。と、言っておられるから、持ってこられなかったと思っていたんですが こっちに持ってきていたんですね? じゃあ、探してみますので。」
入所してから もうすぐ2ヶ月。 こんな時期に 急に眼鏡がなくなってしまうなんて きっともう見つからない気がします。
ケアマネージャーさんは 長期入所者の担当からは外れてしまうので 担当の介護士さんは 違う方になっていますが こっちに来てから 義母が一番心を許しているのが 彼女のような気がします。 ケアマネさんも 時々様子を見て下さり こうやって報告してくださいます。
我が家に 義母がやって来てから びっくりするほど沢山の物が 行方不明になっています。
第1日目の「鞄がない」から始まって 引越しの挨拶状を写真入りで 作ってあげた「葉書」、靴、杖、服、下着。 お金。 住所録。 ざっと 思いつくだけでも こんなです。
極めつけは お位牌が三体。 義母にとっては 父母・旦那のお位牌です。 まったく理解不能のまま 見つけても見つけても 隠してしまうのです。
「お位牌は どうしたの?」と 聞くことにも疲れ果てた 私たちは お位牌は別の棚を作って飾る事にしました。 義母は空っぽの仏壇に 毎朝手を合わせ、水やご飯を供えていました。 夜中、「仏壇から白い光が出る」と言って 動き回る日々も多々ありました。
入所してからは そんな話も出なかったので 人並に気をはって いたのでしょう。
そろそろ、慣れてきたんでしょうかね?
「ない、ない。」病は アルツハイマーの常識ですもんね。
その辺に置きっぱなしの「眼鏡さん」は きっと 周りの入所者さんの 誰かの箪笥の中にでも入ってしまったら ブラックホールのように見えてるんだけど見えない状態で 消えてしまうような気がします。 認知症の人の6人部屋だからです。
でも、もしかしたら 介護士さんたちは、こういう事のプロだから 上手に見つけ出してくれるかもしれません。
そんな事を期待して 洗濯物を届けてきました。
どこかに隠してあるのかもと 「宇宙人」用の箪笥の中を 隅々までじっくりと 探してみましたが やっぱり見つける事は出来ませんでした。 施設の中の自分用のスペースなんて 限られていますからね。
家でも 持って行く場所すらないのに 忽然と消えてしまって 未だに見つけられない品物が いくつもあります。 私やダンナがどんなに探してあげても 見つけられないものが 数日後に 元の場所に並んでいたりする事も ありましたし。
毎回、毎回、振り回されて 「どうなってるんだ~!」と その頃は本気で思っていましたが 先生 曰く「それこそアルツハイマーの真髄じゃ 同じ世界に生きているんじゃないのだから。」
けれども、そう言われれば バカダナァ~私。 やっぱり 家でも他に 何個か眼鏡を持っていたかも と思って 荷物を探しているのです。 結構 不思議な法則で いろんな物がグチャグチャに 出てきたりしますが、肝心の眼鏡は こっちでもやっぱり行方不明でした。 度の厚い ケースのない古い老眼鏡が一つ見つかりました。 が、こんなの使わないだろうなぁ~。 けど、一応 施設には持っていきます。
「おーい! 出てこーい! 眼鏡!」
「最近のお婆ちゃんの様子は どうなんでしょうか?」
「おばあちゃんは 他の方よりも シャキシャキ動くことが出来るので お手伝いを頼むと喜んで やってくれるので助かっていますよ。 お習字も しっかりと字が書ける日もありますし。
使った新聞紙を たたんでもらったり、片付けもちゃんと出来ますよ。」
ケアマネージャーさんが 一緒に様子を見に行ってくださると、「この人、おしゃべりだったんだ。」と 思うほどよく しゃべりかけてきます。
そんな時に限って
「私は いつまでここに いるのかねぇ?」
「セナ(前に飼っていた犬の名前です)は 元気にしてる?」などと 聞いてきたりします。
そして、帰りがけには
「下まで 送っていくよ。」なんて 言い出しました。
火曜日は そっけなくて 「じゃあね。」と 振り向きもしなかったのに。
「長野は寒いから 冬はこっちにいた方が 暖かくていいですよ。」
「だよね。」
「お友達も いっぱいいますからね。」
「だよね。 わかった。」
この「だよね」と「わかった」が 超 食わせ物。
ホントは なぁ~んにも わかっていないし、納得もしていないんだから。
この言葉が出てくるようになって来たってことも うちにいる時に近くなってきたって事なのかなぁ? それは いいことなのか、悪い事なのか? 考えない事にする。
施設の人は 症状が出ても プロなんだもんね。
ダンナじゃあないけれど その分 お金払ってるんだもんね。 と、納得する事に決めました。
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