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2015年7月20日 (月)

迷子

  台風の通り過ぎた土曜日の午後の長野県北部は 北陸地方で熱帯高気圧に変わったけれど 気圧の影響でしょうか、薄曇り時々 小雨が舞ったりしていました。

 けれど 森では蝉の声が大きくなってきたり 小鳥のさえずりも聞こえだしてきました。
一番外に出るタイミングを図っているメグタが 我慢の限界だぁ~のポーズを始めたので
トイレ散歩に出かける事に しました。

 家を出かけようと玄関先に出たのがPM1時30分すぎ。
出掛けに ガス屋さんのお兄さんが見えて
 「今 出掛けるところだった。」「いいタイミングでよかったねぇ。(笑)」「ご苦労様です~。」
なんて会話を楽しんで いざ歩き始めたほんの数メートルで ダンナからメールの音が…。

 その音で なんだかのスイッチが入ったのか メグタの暴走が始まってしまいました。


 「やばい!」と 思った瞬間には メグタのスタートダッシュは始まっています。
が、最近の飛び出し振り逃げの気配が わかったので即 追っかけること10m。 引きずっている紐を 捕まえました。

 「ひゃ~ぁ。 セーフだった。」と 思った途端 三叉路の向こう側の木陰から ひょっこりお婆さんの姿が…。 

 そこで 例のごとく メグタのワンワンが始まってしまいました。
お婆さんは プードルのボクちゃんを連れていたからです。 小さい体でも オス犬同士ですから ボクちゃんも負けん気が強く 応戦してきます。


 「まあまあ、怖いこと。 怖いこと。」と言って自分の家の方向へ くるんと方向を変えました。


 「吠えちゃってごめんなさい。 すいません。」と メグタとボクちゃんを素早く引き離して 私たちは駆け足で いつものようにお散歩に出掛けてきました。




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  ところが 大変な問題がこの後 起こっていたんですね。


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                クリックすると大きくなります。↑



 こんなきれいな夕暮れ時 6時半頃 防災用の有線放送から 行方不明者のお知らせが流れました。

 「○○地区の8○歳の女性が 行方不明になっています。 服装は…。 」

 (あ、また行方不明のお婆ちゃん。 この頃 毎日だ。 多いね。)なんて 夕食の準備をしながら何気なく聞いていたら 

 「茶色のプードル犬を連れています。 見かけた方は○○ー○○○○までご連絡をお願いします。」


 「え? ボクちゃんのお婆ちゃん?」


 私が会ったのは昼間の2時頃で 今はもうあれから4時間半も過ぎています。
ボクちゃんとワンワンやったのは お婆ちゃんのお家のすぐ裏道です。
ブツブツ言いながら 自宅の方向へ帰って行ったので 「すいません」としか声を掛けなかったのですが。 あの時 ひと声かけた方がよかったのか 気になります。

 携帯の番号を知らないので お婆ちゃんのお家と 懇意にされている友達に 電話で確認してみました。


 「さっき有線で流していた行方不明者って ボクちゃんのお婆ちゃんじゃないよね?」
 「そうなんだって。 うちも暗くならないうちにって 軽トラで探しに出たんだけど 見つからないんだよ。」
 「私 昼間見たよ。 庭に倒れてるんじゃないの?」
 「ううん、家の周辺には いなかったって。」
 「ボクちゃんが逃げちゃってパニックになったのかな?」
 「早く見つかるといいね。」


 ボクちゃん家が お引っ越しをされてこちらに住み始めた頃 ちょうど我が家は 義母の徘徊が始まっていました。 余裕も何もなく 介護が必死で悲惨な日々でした。
毎日 家族の忙しい隙を狙うように どこかへ出かけてしまう義母には 名前と電話番号を持ち物につけて ご近所には見かけたら電話連絡してくださいと お願いして回りました。
 その時に 「うちのお婆ちゃんも 軽いアルツハイマーあるのよ。」と 話されてました。
普段目には認知だということは見分けが出来ない穏やかそうなおばあちゃんでした。
同居ではなく 時々お爺ちゃんと庭を手入れに見えている様子でした。



あれから数年 私もメグタのお散歩の時に 花を植えたり雑草を抜いている姿を見かけていますし ボクちゃんとは 庭先で放し飼いにされているので ワンワンやり合うのは恒例なんですが
毎回「これ、これ」などと 初対面のご挨拶を丁寧にしてくださるので やっぱりアルツハイマー病なんだと 理解していたつもりだったのでした。 
アルツハイマーは進行形の病気だと身を持って知っていたのに やっぱりご近所とは言っても ほんの数分挨拶する程度では わからないものです。




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 「見つかりました」の 有線が流れたのは それから大分時間が流れた夜9時過ぎでした。
よかった。 見つかったんだ。 
家族はひとまずホッと一安心ですね。


 翌朝 友人から メールが届きました。

 『お婆ちゃん、見つかりました。 ショッピングセンターの方まで歩いていたそうです。
無事でよかったです。』

 ボクちゃんも お婆ちゃんと一緒に保護されたそうです。 家からざっと10km近くも歩き回ったわけで ずっと嫌がらずに一緒に歩いてくれて 凄い忠犬ですよね。
頑張ったね。ボクちゃん。





Img_1534_pudoru
 
 犬を連れて歩いていると 昼間でも夕方でも 自然に地元の人だと思われて 誰も不思議に思わないんですよね。
だから誰にも 声を掛けられずに にぎやかな人通りへ誘われるように歩いてしまったんでしょうか?
何処へ向かって歩いているか、本人ですら説明がつかないのが 徘徊中のアルツハイマー病の人なのだと 以前義母のかかりつけのお医者様から言われたことがありました。

この話を聞いて 当時の必死で探していたやるせない怒りにも似た悲しい気持ちが 甦ってきました。
長い徘徊が始まらない事を 祈るばかりです。

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介護っぽい話」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
メグタライバルのにおいで
ダッシュしたのかもしおれませんね。
でもおばあさん何事もなくよかったですね。
最近自分も物忘れがひどく、身につまされます。
でも介護については大きな問題ですよね。
人として終末を迎えたいものですが、難しい問題ですよね。戦争参戦法に情熱を傾けるより、基本的な国民の行く先を考えれば良いリーダになると思うのですけど、2世の苦労知らずのお坊ちゃんには無理でしょうね。

投稿: mitakeya | 2015年7月20日 (月) 20時10分

mitakeya 様。
本当に今日じゃなくってよかったです。
今日は長野県一番の高温の35.6度でした。
今日だったら熱中症でどこかで倒れていたかもしれないですよね。
介護保険・年金云々とか 国民から税金をいかにして絞り出させるかとか、支給時期や金額を少なくするかという話は即決まるのに 目の前で困っている国民の声は全然見えも聞こえもしないんだものね。
政治不信にもなりますよね。

投稿: うっちゃん | 2015年7月20日 (月) 22時42分

私も独身の20歳ごろ、同居していたおじいちゃんの徘徊で、大変だった頃を思い出しました。今から30年以上前です。やはり、有線がある小さな町で、すぐに見かけた人が知らせてくれたり、名前だけ言えたので、電話帳で探して、電話をくれたりしましたが、有線で知らせてくれるような、時代では無かったです。
助かりますよね。

投稿: ぽえむちゃん | 2015年7月20日 (月) 22時52分

ぽえむちゃん 様。
以前は行方不明者の情報提供など流していなかった有線がこの所連日流されています。役に立っていると思います。
徘徊という言葉は使用されていませんが 高齢の方の時は経験者だけにピーンときますね。
歩きでなら見つけやすくても車で出掛けられたら 全く見つけようもないです。
介護の辛さはやってみないとわからないのが 家族にとっての本音ですね。
本人はもちろん辛いでしょうが 日本の介護保険は本人だけに有効でクタクタになっている家族には冷淡そのものです。
後わずか数年で老人大国になるのが分かっているのに
現実はこんなで個人まかせなんですよね。 

投稿: うっちゃん | 2015年7月21日 (火) 11時31分

こんばんは。
私たち夫婦もいつこの病が発生してもおかしくない歳なので、身につまされる思いで読ませていただきました。二人暮らしなので二人同時に発病したらどうなるのでしょう。本人たちは何もわかってないのでこれでいいのかもしれませんが…。長生きするのも考え物ですね。でも適当に死ぬわけにもいかないし。困ったものです。

投稿: nobunagaE.T | 2015年7月21日 (火) 23時40分

nobunagaE.T 様。
コメントありがとうございます。
今の時代何歳だからと線が引けるほど単純じゃないので
誰だって近い未来さえ見えずなんだか不安ですよね。
でもダンディなnobunagaETさんなら大丈夫ですよ(笑)
アルツハイマーの方は自分が病気ということが分からない病気だからご自分のことを心配できているうちは 多分セーフですよ
お二人で笑いながら暮らせたら そんな幸せな高齢の健常者のご夫婦も たくさんいますしね。

投稿: うっちゃん | 2015年7月22日 (水) 15時47分

お婆ちゃんとボクちゃん、無事見つかって良かったです。

投稿: 中年ライダー | 2015年7月24日 (金) 15時36分

中年ライダー 様。
本当に よかったですよね。
それにしてもこの老人パワーとワンコパワー
侮れないです。

投稿: うっちゃん | 2015年7月24日 (金) 16時25分

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